2016年3月16日水曜日

ベースアンプ選び

はじめに


最近、楽器店で小型ベースアンプを見かけることが多くなった。以前は小型ベースアンプといえば大型のものに比べて音質の悪いものという印象があったが、技術進歩の恩恵か、小型といえども大型のベースアンプに負けない良質な音を奏でるものが増えている。スタジオやライブハウスごとに違うアンプを使っていると、毎回違った音作りをすることになってしまうが、ベースアンプヘッドを持ち運ぶことでキャビネットが違えど近い感覚で音作りが可能になる。またスタジオに置いているベースアンプヘッドが物足りなかったり、好みでなかったりすることもあるだろう。アンプ選びは電気的なことを含め、知っておかなければならないこともある。今回はベースアンプヘッドの購入を考える上で必要な知識をなるべく幅広くお伝えしたいと思う。


ベースアンプとは


ベースアンプとはベースの音を作り増幅させるものである。いわゆるスピーカーの部分はキャビネットと呼び、その上に乗っているつまみのついた箱をヘッドアンプという。その2つが一体になっているものをコンボアンプと呼び、別々に分かれているものをスタックアンプと呼ぶ。コンボアンプは比較的小型のものであり、音量もそれほどでない。比べてスタックアンプは大型のものまであり、音量も大きく出せるものがある。スタジオによってはコンボアンプが置いていることもあるが、大抵スタックアンプが置いていると思う。今回は特にスタックアンプのヘッド部分に焦点を当てて考えていきたい。

なぜ持ち歩く必要があるか


1つ目は、ヘッドアンプによって音が大きく違うからである。
スタジオで最もよく見かけるのはAmpegやHartkeのアンプだろう。他にもいろいろなアンプが置かれていることがあると思うが、この2種を比べても音の方向性はまったく違う。Ampegはいわゆるロックサウンド。どちらかといえばミドルレンジが強く、やや歪みがち。ゴリゴリした辛いサウンドだ。Hartkeは比較的ハイレンジが強い印象。歪み感はあまり感じず、比較的クリアでレンジの広い良く言えばオールマイティーサウンド、悪く言えば特徴がやや薄いサウンドといったところだろうか。筆者自身どちらも嫌いではないが、やはり自分のサウンド作りをどのスタジオでもライブハウスでもしたいものである。サウンドキャラクターの影響はベース本体やキャビネットのカラーも大きく出るが、ヘッドアンプの影響も大きく受けている。また、つまみの感覚を覚えておくことで、キャビネットが変わっても狙った音を作りやすくなるというメリットもあるだろう。

2つ目は、ヘッドアンプの出力不足である。
スタジオによっては十分な出力を確保している場所もあるが、場所によっては出力不足を感じる。よくスタジオで見かけるHartkeのHA3500は350Wの出力しかない。バンドによっては十分こと足りるが、ドラムがパワフルな場合やビッグバンドになると音が埋もれるだろう。キャビネットの出力が十分でもヘッドアンプの能力が不足していると十分な能力が発揮できない。またヘッドアンプが小さいと音量をフルに近い設定で使うことになる。フルに近い設定では、もやはヘッドはフル稼働状態にあるため音量の強弱が出にくくなり、音が潰れ、歪む。音像は中域ばかり強調され、レンジが狭くなり、音像が崩れるという、あまり良くない使い方と言える。ヘッドアンプのゆとりのことをヘッドルームと呼び、ヘッドルームにゆとりがあると安定した音作りが可能であると言えるだろう。ヘッドルームにゆとりがないと、ベース本体の音を生かしきれないという状態になっている。この理由だけでもヘッドを持ち歩く理由があると言える。



ヘッドアンプの構造


ヘッドアンプは大きく分けて2つのセクションからなる。

・プリアンプ
入力された音はまずプリアンプ部を通る。ここは音色を作り、調整する部分である。つまみのゲインやイコライザー部分はプリアンプにあたる。

・パワーアンプ
プリアンプを通った信号はパワーアンプで増幅される。マスターボリュームはパワーアンプの音量にあたる。ちなみにセンドジャックから送られる信号はプリアンプを通った後の信号で、リターンから入力する信号はプリアンプをバイパスする。つまり、リターンにジャックを差し込めばプリアンプを通さずに音作りすることもできるのだ。アウトボードプリアンプを使い、リターンに差し込めば好きなプリアンプを組み合わせて使うこともできる。逆にセンドから音声信号を送ることでヘッドアンプをプリアンプとして使うこともできることになるが、ヘッドアンプはキャビネットを繋いで使わないと壊れるものもある。そこはマニュアル等で確認しよう。

ヘッドアンプの構造には主にプリアンプ、ヘッドアンプそれぞれに以下の種類がある。

・ソリッドステート(トランジスタとも呼ばれる)
・真空管
・デジタル(クラスD、D級などと呼ばれる)

これらの構造はプリアンプにソリッドステート、パワーアンプにデジタルといった具合に組み合わされて使われている。


ソリッドステートは現在スタジオで最も多く使われているであろう構造である。プリアンプ、パワーアンプ共にソリッドステートのものが多い。というのもソリッドステートアンプは壊れにくく扱いやすいという特徴があるからである。ソリッドステートの音はやや硬く比較的クリア。歪むと中域が強調されややブーミーな印象である。


真空管はベースアンプではプリアンプに使われることが多く、パワーアンプに使われることは少ない。というのは、おそらく音の特徴にある。真空管の音色は暖かく、ややローミッドあたりが強い印象。強弱によって音に真空管特有の自然な歪み感が加えられ、音のボリューム感が自然に感じられる。しかし、ギターなどに比べ比較的クリーンな音を必要とされるベースについてはプリアンプのみ真空管という構造で十分なのかもしれない。
真空管は他の構造に比べ壊れやすく、扱いづらいという特徴がある。真空管は消耗品であり、10年に1度ぐらいは交換した方が良いとの見方もある。さらに真空管が使われているアンプは正しく電源を入れないと真空管の寿命を縮めてしまう。

真空管アンプの電源の入れ方
1.ミュートスイッチをオンにしミュートした状態で電源を入れる。
2.数分待って真空管が十分に温まってからミュートスイッチをオフにし音を出す。

電源を切る際はこれとは逆に、ミュートスイッチをオンにしてから電源を落とす必要がある。
真空管アンプは他の構造に比べ熱を発しやすく、冷却が必要となり構造上、他のものと比べ大型になりやすい。


デジタルは最近の小型ベースアンプヘッドによく使われている構造である。D級やクラスDなどと呼ばれることもある。持ち運びの面で非常に有利である一方、以前はデジタルアンプというと他のアナログ構造に比べ音質面で劣る印象であった。しかし、最近のデジタルアンプは非常に良くできており、必ずしもアナログに劣るというわけでもない。プロでも小型デジタルアンプを持ち運んでいる姿はよく見られ、大型のライブでも小型アンプを使ってるなんてことはよく見かけるようになった。
デジタル構造はパワーアンプで使われているものが多い。デジタル構造は歪みに弱く、音作りという意味では他の構造にやや劣る印象だ。ソリッドステートや真空管がそれぞれ自然な歪みをだす一方、デジタルでは歪ませると、なんだかデジタル臭く、安っぽい音になる。しかしながらデジタルはクリアな音色が得意である。パワーアンプに使うことでプリアンプで作った音をクリアに増幅させることができ、大型アンプに匹敵する大出力でも小型化を実現できたというわけだ。


これらの構造はどれがいいとははっきりとは言いずらく、どれもそれぞれ良さがある。例えばスタジオに持ち運びやすくて大容量でクリアな音色のアンプが欲しいとなると、プリアンプがソリッドステート、パワーアンプがデジタルという組み合わせがいいかもしれないし、大きさは気にならないのでマイルドな甘い音色が欲しいとなるとプリアンプに真空管、パワーアンプにソリッドステートという組み合わせもいいかもしれない。それぞれの特徴がわかるとアンプ選びもやりやすくなるだろう。



W数と音量、出力


アンプの音量がどれぐらい出るのかという目安としてW(ワット)がある。
これはヘッド、キャビネットにそれぞれに決められており、基本的にはヘッドに比べてキャビネットのW数を大きくするのが決まりである。ヘッドは出力、キャビネットは許容入力といった具合で表記されている。つまり小さいキャビネットに対し、ヘッドからあまり大きな音量や電力が送り込まれると、スピーカーが破損したり焼損してしまったりする。なので、普段使う環境ではなるべくキャビネットの数値を超えない方が安全だ。しかしながら、実のところキャビネットの数値を上回る状態で使っている場面も多くある。ヘッドアンプの音量を抑えて使えば、大丈夫な場合が多い。キャビネットの許容入力(RMS)という値は、あくまで入力値を超えた状態を長時間続けると危険という数値である。つまり電子キーボードなどで一定の音量で入力し続けた場合などである。キャビネットによってはさらにミュージックプログラム(PGM)、ピーク(PEAK)といった具合にW数が別々に表記されている場合がある。ミュージックプログラムは楽器などの入力値が一定でない場合の許容範囲、ピークは一瞬でも超えると危険な値となる。ちなみにBAGENDのD10BX-Dというキャビネットであれば、Power Handling 400W (4 ohm) / 800W (Music Program) / 1600W (Peak)という具合に表記されているが、ベースで使う場合は基本的に800W程度は大丈夫だと言える。ここに1000Wのヘッドを使う場合は音量を抑えて使わないと危険と言えるだろう。また、真空管がパワーアンプに使われている場合、表記の数値に対しピークが倍近く出力される場合がある。フルチューブアンプなどを使う場合には気をつけよう。しかしながら、キャビネットの限界値は目では見えないので自己責任で行って欲しい。またスタジオやライブハウスによっては危険なため使わせてもらえない可能性もあることを理解しておこう。

ヘッドアンプを買うにあたりどれぐらいのW数が必要になるかは、人や環境によってそれぞれだと思う。
まず自宅での練習であればヘッドアンプは100Wもあれば十分すぎる。普通の自宅であればそれ程音量を出すこともないだろうし、コンボアンプを選んだ方がいいかもしれない。
バンドの音量はドラムの有無によって大きく変わると思う。ドラムのいないアコースティックバンドであれば300W程度で大丈夫だろう。
問題はドラムのいるバンドである。ドラムのパワーによってバンド全体の音量を決めることになるため、ドラムによって必要なW数が変わる。スタジオには大体300〜500W程度のアンプが置かれていることが多いが、パワーのあるドラマーと一緒に演奏すると500Wでも出力不足を感じることがある。ヘッドルームのゆとりを確保できず音が悪くなる。そうなるとできれば500W以上のものが欲しいと思われるが、筆者はソリッドステートで600W以上、デジタルで750W以上をお勧めする。ヘッドルーム確保のため、さらにもう少しゆとりがあると安心だが。ソリッドステートとデジタルで分けたのには意味がある。実はパワーアンプの構造によって表記出力と、実際の体感音量に差が出る。
真空管>ソリッドステート>デジタル
といった具合である。ちなみに筆者は450Wの AMPEG SVT-410H(パワー部はソリッドステート)と、600WのGENZ-BENZ STM600(パワー部はデジタル)を同じキャビネットで弾き比べたところ圧倒的にAMPEGの方が音量が上だった。ちなみにSTM-600は感覚的にソリッドステートでいう350Wといったところだろうか。そのため、小型デジタルアンプではよりゆとりを考えて選んだ方が良いと言えるだろう。
さらに、おまけとして書いておくとTONE HAMMER 500とTECAMP PUMA900 はW数は500Wと900Wで大きな差があるにもかかわらず、パワーアンプに関しては同じものが使われているという話を目にしたことがある。構造により同じものでもそれだけの差が出せるのかもしれないが、W数の表記はあくまで参考程度であり、機種によっても差があることを理解しておこう。
あともう一点、キャビネットによっても同じW数で出る音量が違う。それはスピーカー効率(能率や感度、SENSITIVITYなどと表記される)である。マニュアルなどに表記されていることが多いが100dB SPL 1w/1mなどと書かれている。これはつまり1Wの入力でスピーカーから1m離れた場所で100dBの音量が出るということである。キャビネットによって103dBや97dBなどあると思う。3dBの差は小さく思われるが、実はこれは倍の音圧差があると言われる。97dB と103dBはなんと3倍だ。音量が3倍と言われてもピンとこない人は多いと思う。わかりやすく説明すると、97dBのキャビネットを3台ならべたときと同じ音量であるということだ。これに関しては、スタジオのキャビネットによって違うため、キャビネットを持ち運ばない人にとってはあまり気にすることはないと思う。
電気抵抗(Ω)の関係によっても出力は変わるがこれは後述する。

ライブハウスではDIを通してPAに音を送るため、アンプはあくまでモニターとしての役割になることが多い。が、筆者としてはモニターが良い音を出しているかどうかもとても大切だと思う。音が良いと悪いとでは演奏が変わる。とくにアドリブなどでは出てくるネタが変わってくるように感じる。ピッキングのニュアンスなどのモニターによって変わる。音作りというのは自分の演奏のためにも大切なのである。


ヘッドアンプとキャビネットのマッチング、Ωについて


おそらくここがヘッドアンプを選ぶ上で一番ややこしいところだろう。あえて結論から言うと4Ωのヘッドアンプが標準といえるし、おすすめであろう。しかし、環境によってはそうとも限らないので、理解しておく必要がある。
このΩというのはピンとこないものだが、電気抵抗のことである。といってもピンとこない人が多いと思う。なのでルールを頭に入れると良い。このルールから外れるとヘッドアンプが壊れる場合があるため非常に注意が必要であり、必ず理解しておかなければならない。

・ヘッドアンプ、キャビネットにはそれぞれΩが定められている。
・パワーアンプが真空管のものについてはヘッドとキャビネットのΩが一致していなければならない。
・パワーアンプがソリッドステートやデジタルの場合、キャビネットと同じ、もしくはより小さい値のΩでなければならない。
・アンプから並列で2台のキャビネットに接続する場合、ヘッドアンプのΩは倍になり、それぞれへの出力(W数)は約半分になる。
・キャビネットが8Ω、ヘッドが4Ωの場合ヘッドの出力は約半分になる。

これだけみるとなんだかとてもややこしい。しかし、スタジオに置いているベースキャビネットはほとんどが4Ωもしくは8Ωである。そのため4Ωのヘッドを選べばほとんど接続できるといえる。しかし、8Ωのキャビネットに接続する場合は出力が半分になるので音量が不足する可能性があり注意が必要だ。あと、スタジオによっては8Ωのキャビネットが2個積み上げておいてある場合もある。この場合も4Ωのヘッドアンプからそれぞれに接続することで、8Ωになりそれぞれに半分ずつ出力されるため問題ない。ちなみに4Ωのキャビネット2台に4Ωのヘッドは接続できない。

4Ωのヘッドアンプ(パワーアンプがソリッドステート)で使えるパターンを整理すると
・4Ωのキャビネットが1台
・8Ωのキャビネットが1台〜2台
ということになる。

ちなみにヘッドアンプを買う際に800W出力と大々的に書いておいて、2Ωということがある。つまり、ほとんどのスタジオでは4Ω以上で使うことになり、結果400W以下の出力しか得られないということになるため注意が必要だ。
スタジオによって置いているキャビネットが違うため、初めてつかうキャビネットは正しい接続方法をインターネットでマニュアルなどを検索して利用することになる。


メーカーごとの特徴


小型ベースアンプヘッドを選ぶ上で全て試奏するのは難しいということもあるだろう。まず自分の好みの音色にあったメーカーを選んでから試奏するといいかもしれない。もちろん機種によっても音は違うが、メーカーごとにそれぞれ個性があると思う。筆者のもつメーカーに対しての超個人的感想を述べよう。こればかりは人それぞれなのであまり参考にしなくていいと思う。

AMPEG
言わずと知れたベースアンプメーカーだ。ベーシストならだれもが一度は弾いたことがあると思うのでイメージはつきやすいだろう。標準的なベースサウンドとも言えるが、実は割と味付けは濃い。ロックサウンドににあう自然な歪み感が特徴で、ポップやロックに似合うサウンドと言えるだろう。
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HARTKE
こちらも多く見かけるベースアンプだ。クリアな音色で幅広いジャンルで使われている。あのVICTOR WOOTENもHARTKEの宣伝によく出ており、ロックからジャズ、フュージョンまでジャンルを問わない薄味の音色と言えるだろう。
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MARKBASS
こちらはおそらく小型ベースアンプヘッドで最も多く見かけるメーカーだと思う。楽器店でも小型アンプを置くならこれ、と言わんばかりに良く置いている。音色はやや丸く温もりのある野太いサウンドが特徴。ロックやポップスなどによく合うと思う。
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EDEN
スタジオなどではあまり見かけないが、プロ御用達のベースアンプメーカー。クリアでハイファイな音色。最近は小型ベースアンプヘッドなども出したが、WTX-500はピークランプがつきやすく、出力が小さいらしい。ヘッドアンプは大きくモデルチェンジしたがロックな印象が強くなったかな。
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ASHDOWN
VUメーターが見た目にも素敵なアンプメーカー。太く倍音豊かなサウンドが特徴。筆者は個人的にASHDOWNの昔のモデルが好きだった。が、当時はイギリスで作られていたのに対し、最近は中国製のものがほとんど。低価格ではあるが、いろんなモデルをどんどん出ては廃盤にしていっている。作りも音も安っぽくなり、最近のASHDOWNはやや残念だ。イギリス製の頃のASHDOWNは絶品である。
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AGUILAR
エフェクターでも有名なメーカーである。ベース本来の持ち味を生かす印象で、薄味。AGUILARのDB751は図体は大きいが、なんとも甘く素直な音色。筆者個人としてはこれこそベースアンプの王道ではないかと思う。スラッパーにも利用者の多いアンプメーカーであるが、歪みにはめっぽう弱い印象。
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TC ELECTRONIC
小型ベースアンプではもはやMARKBASSに並ぶ存在になりつつあるアンプメーカー。アンプにチューナーが付いていたり、パッチを保存できたりと、見た目にも現代感のあるアンプを出している。音も非常にクリアなサウンドで、優秀。だがデジタル感は否めず、TUBE TONEというチューブアンプを再現したつまみはあまり使い道がなさそう。
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TECAMP
とにかく音がクリアなアンプメーカー。素直というよりは、ハイとローが綺麗に出るので地味に味が濃い印象。特にハイは特徴的で、強いのに嫌味がない。これはロックやポップスというよりはフュージョンやジャズに向いていると思う。またスラップにも向いていると思う。ちなみに筆者TECAMPのPUMA 900を愛用している。
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おわりに


色々とヘッドアンプの選び方について述べてきたが、筆者個人がお勧めする条件は750W以上の4Ωアンプで小型のものがいいと思う。大型のものも、音が気に入ればそれに越したことはないが、小型のものでも最近では十分な音質が出ると感じるし、なにせ持ち運ぶのが大変だ。また、ヘッドルームはなるべく確保するようにしよう。個人的には音質を向上させる上で、むしろこれが一番重要ではないかと感じる。あと、なるべくたくさんのアンプと触れ合うことをお勧めする。スタジオによってはヘッドアンプの貸し出しをしてくれるところもあるし、ネットで目当てのヘッドアンプがおいているスタジオに試奏しに出かけるのもいいだろう。弾けば弾くほど自分にとっていい音とは何か、というテーマに対し深く理解していくことができると思う。今はどんな音がいいかわからないといった人も、なるべく色んなベース、アンプなどと積極的に出会う機会を作ることで自ずと自分のこだわりの音色が見つかっていくものだと思う。







2015年10月28日水曜日

TECH21 サンズアンプ SansAmp BASS DRIVER DI レビューと使い方&試奏音源


はじめに


TECH21 SansAmpBASS DRIVER DIは恐らくライブハウスなどで最も多く見かけることが多いのではないかと思われるほど、使っているプレーヤーが多く、著名なプレーヤーも利用している方が多いため、誰もが一度はその音を耳にしているのではないかと思います。筆者も愛用者の一人で、長年利用しています。もはや言わずと知れた名機SansAmpについてレビューと使い方を紹介していきたいと思います。






SansAmpとは


SansAmpはエフェクターの中でもプリアンプと呼ばれるものです。そもそもプリアンプというのは、音のボリュームや音の特徴となる周波数などを調整するもの。普段スタジオで使っているアンプのヘッドやアクティブベースと呼ばれるタイプのベース本体にもプリアンプが内蔵されています。
「アンプのヘッドやベース本体にもプリアンプが内蔵されているなら、なぜ他にプリアンプが必要なのか?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、プリアンプによって音に特徴があり、調整できるつまみの周波数や種類などにも差があります。自分好みのプリアンプを一台持っておくことで、スタジオやライブハウスで違ったアンプを通した時に、いつもと同じ感覚で音作りができるといった点が大きなメリットとなります。
またSansAmpはDI(ダイレクトボックス)機能も備えています。この機能は簡単に言うと、SansAmpから低ノイズで直接ミキサーに繋げることができるものです。ライブハウスではベースをアンプではなくダイレクトボックスという小さな箱に繋げることが多いと思いますが、SansAmpがその箱の代わりとなり、左側面にあるXLR端子からミキサーに直結できます。ベースからアンプやミキサーなどへ繋ぐ際、音質の劣化を防ぐためには、なるべく間に必要のないものは挟まない方が良いのです。





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音の特徴とレビュー


SansAmpはチューブアンプエミュレーションという回路を搭載しており、真空管アンプの質感を再現したものです。プリアンプにも色々な個性を持ったものがありますが、SansAmpは比較的個性の強いものと言えます。「良い意味でも悪い意味でもどんなベースを使ってもSansAmpの音になる」と巷では言われていますが、まさにその通り。比較的ベース本体やアンプに左右されず、近い音を出してくれます。ただSansAmpが名機となったのは、その音が非常に優秀であったためです。多くの人が気持ちいいと感じる音を繋ぐだけで作ってくれるので、初心者にとっても簡単に使えるといえるでしょう。またベース本体が安いものであっても、SansAmpを繋ぐことでランクアップしたような使える音になることが多いため、ベース本体の音が気に入らない方についてもオススメです。逆にベース本体の音を生かしたいといった利用には向かないと思います。

SansAmpは繋ぐだけで音が太くなり、いわゆるドンシャリと呼ばれるサウンドになります。つまりミドルをカットしトレブルとベースをブーストしたような音です。ただそのサウンドの調整は絶妙であり、まさに名機。皆がこぞって利用するのも頷けます。特にパッシブタイプのベースでは音の太さが足りず、アンプでベースを足してやることも多いのですが、SansAmpを繋げば、つまみはフラットでもそれだけで十分な音の太さを得ることができます。音が太くなるとバンド全体の音の厚みが増すとともに、ギターなどと音がぶつかることも少なくなるので、他のメンバーから良い評価を得られることが多いです。またドンシャリサウンドはスラップの標準的サウンドでもあり、SansAmpは比較的スラップとの相性もよく、バキバキになります。

クリーントーンはもちろんですが、歪んだ音もなかなか使えます。ちょうど真空管オーバードライブといった感じで、絶妙のドライブ感を演出することが可能です。スライドなどを多用するロックなどでは波にのっているようなドライブ感が出てとても有用といえるでしょう。

これだけ見るとかなり優秀なプリアンプであることがわかると思いますが、弱点もあります。最大の弱点はミドルのつまみが無いこと。ミドルが調整できないためやや不便で、ドンシャリサウンドになりやすいです。ドンシャリサウンドはどちらかと言えば、音のニュアンスがでにくいのですが、良い言い方をすれば音の粒に統一感がでやすくなります。音の粒ぞろいが重要視されるロックやポップスには向いていますが、ジャズやフュージョンなどニュアンス重視の曲にはあまり合わないと言えます。ただ、トレブルとミドルは12時でフラットとなるため、下げることで自動的にミドルが上がってきます。が、やや設定は面倒で、ミドルを重視する方にはオススメできません。


つまみ解説


それでは各つまみと筆者の音作りについて解説していきましょう。



LEVEL

音量の調節ができます。アンプに繋ぐ場合は小さすぎても大きすぎても良くありません。

BLEND

これはSansAmpのチューブアンプエミュレーション回路を通す割合を設定できます。簡単にいうと右に回すほどSansAmpの個性が強くなり、左に回すほど生音に近くなります。ただポイントとなるのが、BLENDを最小設定にしてもTREBLEとBASSのつまみは有効なことです。チューブアンプエミュレーション回路は比較的ドンシャリです。BLENDを下げめに設定しTREBLEとBASSも下げめに設定することで、ミドルをより強調することもできます。筆者は12時で利用することが多いです。

TREBLE&BASS

12時でフラット。ブースト、カットができます。カットすることでミドルが持ち上がるという仕組みです。筆者は12時で利用することが多いです。アンプやベースによって低音が物足りない時には、BASSをほんの少し足してやることもあります。

DRIVE

これは本当にいい感じに歪んできます。まさにドライブ感をプラスした感じで、バンドサウンドとなじみやすくなります。ロックなどでは特に少し歪ませてやると良いでしょう。筆者はこれもまた12時で利用することが多いです。

PRESENCE

アタック感を調整できます。強すぎると耳に刺さるような音になりますので、筆者は10時ぐらいに設定することが多いです。

PHANTOM&GROUND CONNECT SWITCH

右側に設定することで、XLR端子でミキサー類と接続している際に電源供給を受けることができます。ミキサーと接続しない場合は左側で良いでしょう。

LINE&INST SWITCH

右側に設定することで出力音量を抑え、つないだ先のミキサーやアンプのレベルオーバーを防ぎます。通常左側で良いでしょう。

PARALLEL OUTPUT

SansAmp回路を通さず出力することができます。

電源

9V電池もしくはアダプタで駆動できます。電池ボックスはネジを開けずに開閉可能なところもポイントです。



試奏

ではベースの標準的なモデルでもある、こちらのFender USA JBにて試奏してみたいと思います。


まずは生音から。若干ノイズがのっていますが、このトラックはSansAmpを通さず直接ライン録りしているので、このベースによるものです。あしからず。




ではほぼフラットに近いセッティングから。適度にドライブしてテンポ感のあるロックに合いそうな音色です。ちなみにレベル調整は各トラック別に行っています。またベーストラックは全く同じものをリアンプして録り直しています。




次にSansAmpの個性を強めに出しつつ、歪み感は抑え気味のもの。これぞSansAmpといった旨味のある音がしますね。個性は強いですが、色々なジャンルの楽曲に合いそうです。




次にドライブをかなり強めに設定したもの。ここまで行くとさすがに使えない感じもします。




次にミドルを強調するように設定したもの。SansAmpの個性がだいぶ弱まっています。




最後にトレブルとベースをブースト気味に設定したもの。ここまでくると少し癖が強すぎる気もしますね。




まとめ


定番と言われる商品はやはり良い。筆者は一度買って、もっと他の音作りがしたいと思い売りましたが、また買い直すほど唯一無二の音がします。音作りで悩んでいる方は是非一度試してみると良いでしょう。確かに個性が強すぎるため、いつの日か他の音が欲しくなるかもしれません。ただ、これにしか出せない音がある以上、手放せないのは確かで、一台持っていて間違いはないと思います。また扱いやすいのも特徴であり、上記の通り筆者はほぼつまみ12時で利用しています。筆者はあまりつまみをいじりたくない派ですので、フラットでこれだけの音を作ってくれるのはとてもありがたいです。



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